留学

海外留学

海外留学には、専門性の追求に加えて、国際性の向上、視野の拡大、人脈形成といった様々なメリットがあります。これまで多くの教室員が海外留学し、日本では得られない貴重な経験を積んでいます。基本的に大学院修了後に海外留学可能としており、特に留学先の指定はなく、個人の研究分野や興味にあわせて、世界中のどの国の大学、研究施設でも候補になり得ます。

スタッフメンバーの留学先

  • 氏家 英之:National Institute of Health (Ethan Shevach Lab., USA)
  • 夏賀 健:Cancer Research UK Cambridge Research Institute (Fiona Watt Lab., UK)
  • 岩田 浩明:University of Lübeck (Detlef Zillikens Lab., Germany)
  • 柳 輝希:Sanford-Burnham Medical Research Institute (John C. Reed lab., USA)
  • 泉 健太郎:University of Lübeck (Detlef Zillikens Lab., Germany)

留学中教室員の近況報告

渡邉 美佳

留学先: University of Turin (Giacomo Donati Lab., Italy)
留学開始時期: 2018年5月

上空からのトリノ市街地。屋根の色が煉瓦色に統一されている。
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2018年5月よりイタリアはトリノ大学のGiacomo Donati博士の元で研究生活を送っています。研究テーマは創傷治癒における皮膚幹細胞の可塑性の役割解明を目標に、RNA-seq/single cell RNA-seqとlineage tracing/in vivo imagingをメインのツールとして日々マウスと格闘しています。来た当初は、様々な文化の違いやイタリア語の言葉の壁に落ち込み、この地で研究生活を送れるのかと非常に悩んだ時期もありましたが、徐々にですが慣れることができました。未だに様々な問題は続出し、解決しないことも多々ありますが、それも含めて留学生活の醍醐味の一つと思うようにしています。

トリノは日本人にはあまり馴染みのない街ですが、北イタリア、ピエモンテ州の州都で、フランス風のバロック様式建築が美しくエレガントな街です。ピエモンテ州はフランスと国境を接しており、習慣や方言、料理など随所にフランスの影響が見受けられます。ピエモンテ人は、いわゆる南イタリア人とは見た目も違い、どちらかというと北ヨーロッパのような人が多い印象です。イタリア国内では人口規模第4位で、札幌よりはかなり小さくこじんまりしていますが、治安も比較的良く、イタリア国内では住みやすい街と言われます。実際に、住み慣れると住めば都なのかもしれませんが、私自身も住みやすいと感じるようになってきました。

2019年2月、理研の藤原裕展さんがラボを訪問してくださった時。ラボメンバーと。中央がボスのGiacomo。

研究は、徐々にデータが出てきましたが、なかなか思いどおりに行かないことも多いです。ラボ自体はとても小さく、Ph.D. candidateが2名、bioinformaticianが1名、私とボスで構成されており、とても親密で家族のような雰囲気です。当初は英語をあまり上手に話せなかったメンバーも、最近になってようやく英語で十分にコミュニケーションが取れるようになり、私の存在意義もあると思っているところです。

研究所では全体で200名強程度おり、癌研究をメインとした様々なラボが混在しており、コラボレーションも沢山行われています。他国の大きい研究所と比較すると国際性ははるか遠く及びませんが、それでもインド、中国、フランス、ドイツ、オーストリア、スペインなど様々な国籍の人が在籍しています。現在は週に1回オンラインで持ち回りのセミナーがありますが、毎回発表を見るたびに、人々の研究に驚かされることばかりです。Molecular biologistの知識、技術には敵わないと毎回思わされ、自分自身がPhysician scientist としてこの先どのような研究や生き方をしていけばいいのかと考えさせられています。

2020年は新型コロナウィルスの影響で、約半年ほど実験が止まってしまいました。世界中で研究者がみなほぼ同じ状況とは思いますが、遅れを取戻すべく鋭意努力中です。近日中になんとか結果をまとめていければと思っています。この場を借りて、長期間留学を
可能にして頂いている医局の皆様に感謝申し上げます。

冬のポー川から望むトリノの象徴モーレ・アントネリアーナ(国立映画博物館)。
夜のトリノ中心地。モーレ・アントネリアーナと手前に見えるビットリオ広場。

伊東 孝政

留学先: Columbia University (Yuefeng Huang Lab., USA)
留学開始時期: 2020年7月

夜景
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2020年より米国NY州NYCにあるコロンビア大学にて研究留学させていただいております。

コロンビア大学について

コロンビア大学は1754年に創立された全米で5番目に古い大学で、東海岸に8校存在するアイビーリーグの一つに数えられます。米国の大学でも特に学生の国際色が豊かなことで知られており、外国籍の学生の比率は33%に達します。幅広い分野で高い水準の研究が行われる拠点として、100名を越すノーベル賞受賞者、映画・文学など芸術分野も活発で、28名のアカデミー賞受賞者を輩出しています。実際に、昨年は隣のラボのPIの指導者がノーベル賞を受賞するということがあり、ノーベル賞を身近に感じてしまうという出来事がありました。

ラボについて
ラボからの眺め
実験準備

ボスのHuangは自然リンパ球に関する先駆的な研究を行なっており、着想・知識はもちろん、実験手技も全てが綺麗で研究好きなPIという感じの方です。また、私たちポスドクの実験量が多くて手が足りない際は自ら手伝ってくれるなど面倒見もよいナイスガイです。ラボの構成は日本人の私に加えて他にポスドクが2人、ラボマネ1人という小規模ですが皆精力的に取り組んでいます。私の場合、基本的に週に約2回Big experimentを計画して、その日は早朝にラボに来て10時間以上ぶっ続けで手を動かすという感じです。得られたデータを解析する時間を加えると毎回日を跨いでしまいます。渡米前に耳にしてた?留学生活とはやや異なりますが、基礎研究をやっているという充実感、何より面白い結果を得られた時の嬉しさは変え難いものです。因みに、同じラボのあるポスドクは週3、4回以上これをやっており、最早お手上げ状態です。また、機器の数、KOマウス・試薬の入手速度、研究予算の違い等研究環境自体に関しても日本との大きな違いを感じます。まだ先ですが帰国した際にどう還元できるのかいつも考えさせられます。

毎週、ラボ内ではデータクラブ(DC)とジャーナルクラブ(JC)、そしてDepartment内においてはポスドクの進捗発表会(RIP)があります。DCとJCは活発な意見の交換が求められ、今でも準備に四苦八苦しています。英語も研究も少し成長を感じたと思ったら、打ちのめされる日々です。RIPに関しては、準備に膨大な時間を要しましたが、第一線で活躍している免疫学者達からするどい指摘を頂くことができ大変貴重ないい経験ができました。青汁ではないですが、もう一回くらい留学中にやりたいなと思っています。

ニューヨークの生活について

渡米時はコロナによる影響で全ての娯楽が中止、さらに多くの飲食店は閉店となっており街はゴーストタウンのようでした。また、移住に伴う必要な各種手続きを行う役所、物件の下見、家具の購入・配送等も制限があった状態で、かつ周りに頼れる日本人もいなかったため思っていた以上に生活の立ち上げに時間を要しました。ストレスと夏バテで10kgのダイエットに成功したのはいい思い出です。

一番驚いたのが、物価、家賃の高さです。Studio(日本でいうワンルーム)に月30万以上払うことになるとは思っていませんでした(注; NYCでは平均的な相場価格です)。さらにレストランで食事をしようとなると税金、チップ、コロナ特別税で元値の1.4倍を払うことになり家計は火の車です。アメリカのポスドクの給料はNIHが定めており全米でほぼ一定なのですが、ことマンハッタンにおいては生活していくのがやっとです。因みに、アメリカの皮膚科”勤務医”の平均年収は45万ドル程度です。日本との差に愕然としますが、とりあえず、日本もまだまだ”伸びしろ”があると最近は思うようにしています。

あまりポスドクに優しくないNYCですが、マンハッタンは博物館、美術館、夜景、スポーツ、自然(セントラルパーク)、グルメ、ショッピングなどほぼ全ての娯楽が揃っており、休日に街中をフラフラと歩くだけで楽しいです。その反面、人種の多様性からの差別・ヘイトクライム、街の汚さ・ホームレスの多さが示す格差社会、銃・ドラッグなどの犯罪など実際に住んでみないとわからない裏の面も多々あり、そういう意味では日々緊張感は抜けないというのも事実です。とりあえず、毎日が刺激的です。この1年は休暇をとることがなかったので、今後はNYCから少し足を伸ばしてさらに色々な経験をしてみたいと思います。

最後に、

この1年は短かったようで中身が濃く長かったです。抱っこ紐で小さな息子を抱え、両手に大きなスーツケースを持ちながら家族3人でジョン・F・ケネディ空港に降り立った時の高揚感、住宅選びなどの新生活準備での苦労、そして慣れない英語での対応と多くのことがありました。思い出補正のおかげか、いずれもよい思い出として鮮明に記憶に残っています。現在は少し落ち着いてきて、研究に集中できるようになってきましたが、英語でのコミュニケーションなどまだまだ課題も多く、研究と並行して成長していければと思います。

間違いなく私の人生にとって大きな1ページとなるこの機会を提案してくださりました清水宏名誉教授、この留学を後押ししてくれました氏家英之教授をはじめ甲子会・北大教室員の皆様に感謝申し上げます。そして、何より一緒に渡米し、慣れない環境で日々私を支えてくれている妻と息子に感謝致します。

高島 翔太

留学先: University of California (Bryan Sun Lab., USA)
留学開始時期: 2020年7月

ラボメンバーで野球観戦
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私は2020年7月よりカリフォルニア大学サンディエゴ校皮膚科のDr. Bryan Sunの研究室に留学をしています。当初は4月の渡航予定でしたが、COVID-19の影響で延期を余儀なくされましたが、無事7月から留学生活を開始することができております。その間、関連病院や根本先生をはじめとする甲子会の先生方には大変お世話になり、ありがとうございました。執筆時点で渡米して約一年が経っていますが、COVID-19のことを書くとそればかりになってしまうので、あまり触れずに書いてみようと思います。

サンディエゴはアメリカ西海岸の最南端でメキシコ国境にほど近い街です。UCSDはダウンタウンからは車で20分ほどのLa Jolla(UTC)という地域で、北大皮膚科からは柳先生がSanford Burnham研究所に留学されていましたが、他にもScripps研究所やSalk研究所が隣接しており、学生や研究者が非常に多く治安もとてもいい地域だと思います。

気候は年中温暖でカリフォルニアブルーと呼ばれるように、ほぼ毎日雲ひとつない晴天です。生まれも育ちも札幌の私からすると、朝起きて外に出るだけでとても楽しい気分になれる気候です。その気候もあってか、人もとてもフランクで気さくな人が多く、2歳の息子と出かけると皆が笑顔で接してくれ、家族皆とても楽しく過ごすことができています。年中温暖であり、サンディエゴ動物園やシーワールドといった子供が喜ぶ施設が充実し、車で行ける範囲にヨセミテ、ジョシュアツリー、デスバレーといった国立公園が多くあり、COVID-19の規制をさほど受けない娯楽が多かったのもCOVID-19禍においても幸運だったなと思います。

私の研究室の入っている建物の外観
UCSD病院、一時は至る所にCOVID-19検査場がありました。

UCSDの皮膚科のChairはRichard Gallo教授で、UCSD皮膚科研究室で最も大きな割合を占め、日本人ポスドクも常に3-4人が在籍しています。私の所属先のBryan Sun先生は 皮膚科医でありながらStanford大学皮膚科Khavari教授の元でlncRNAやepigeneticsをメインとした研究をされた後に独立P Iとなられ、臨床の視点も兼ね備えた研究者で研究の着眼点など大変勉強になっております。現在ラボにはポスドク4人とMedical studentやGraduate studentが研究をしており、ビックラボではありませんが若くて非常に活発なラボです。国際色も豊かで米国人の他に、オランダ、中国、スペインからのポスドクと一緒に働いています。

COVID-19の影響を受けて試薬がなかなか届かなかったり、共同研究者の方で実験が止まってしまっていたり、ラボミーティングがようやく最近になって再開になったりと、困ることもそれなりにありましたが、ラボのメンバーとのコミュニケーションは頻繁に取ることができる環境だったので、そのような状況下でも充実した時間を送れていると思っております。また留学当初は大人数でのラボの共有が制限されていたため、新しい実験をなかなか始めることができず、これまで習得していた手法を用いた実験が多くなってしまっておりましたが、徐々に制限も緩和され新たな実験にも着手し始められ、実験の楽しみも日に日に増してきております。

執筆時点でほぼfull openに移行しているので、これからさらに充実した留学生活を送ることができるのではないかと、ワクワクしております。

最後になりますが、このような有意義な留学の機会を与えていただいた皆様に心より感謝申し上げます。

海外留学生の受け入れ

北海道大学皮膚科では海外からの大学院生や研究員の受け入れも積極的に行っています。普段から英語でコミュニケーションを取ったり、英語でのグループディスカッションを行ったりすることで医局内・研究室内の国際化を図っています。

 Jin Teng Peh

大学院生
出身国: マレーシア
出身大学: First Moscow State Medical University I.M Sechenov (Moscow, Russia)
北大皮膚科への所属: 2018年4月

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In April 2018, I started a whole new chapter of my life as a first-year doctorate course student. I am actively working on compound screening for Nagashima-type palmoplantar keratosis. This disease is known to have a nonsense mutation, and readthrough therapy could be the potential cure for it. Before starting my doctorate course, I had never thought that it would take months of repeating experiments to provide some worthwhile data that could support my research. The members of my lab taught me how to do various experiments and analysis. It has been a tough journey so far, but rewarding at the same time. I’ve come to realize and appreciate the time and effort required in this field. I am glad to be a part of this big family and thankful to all the nice colleagues I have met, and am truly grateful for all the opportunities given by the university and the department. Outside of research, I was given opportunities to learn more about clinical work and got to see first-hand how the patients suffer from the disease, which motivates me to work harder to contribute to the discovery of potential cures. It can be a bit challenging studying in a new country, but what I have learned and experienced has made it all worthwhile. During my stay here, I have experienced the culture and beauty of Japan. Life in Hokkaido has been amazing, it is such a great city to live in. It is not as crowded or compacted compared to other big cities and I enjoyed the pace of living here. The people are friendly and helpful to foreign people, especially when I struggle to speak in Japanese. Loving the rich and varied seasons and the many wonderful surprises I have come across and looking forward to what lies ahead in the upcoming years.

Yunan Wang

客員研究員
出身国: 中国
出身大学: China Medical University (Shenyang, China)
学位: 2021年3月 博士号取得(北大皮膚科)
北大皮膚科への所属: 2016年10月

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The decision to study abroad at Hokkaido University has totally changed my life. I have many precious memories so far. The topic of my study is mouse tail skin patterns. There are many animals that have patterns such as zebras and tigers. People also have these patterns. Although this kind of phenomenon exists in many animals, the mechanism underlying the development of such epidermal patterns is still not well understood. I am studying collagen XVII’s relationship with epidermal patterns. It is very interesting. I also became more enthusiastic to learn more and more and to do lots of research. The people in the department of dermatology are all very kind and supportive. They really helped me a lot after I came to Japan. I was moved by their passion and earnest approach to science. Besides that, it is really nice to have this opportunity to learn more about Japanese culture. It also gives me the chance to learn about cultures from other countries by making many foreign student friends. It’s really amazing to be able to be together with students from different backgrounds, experience the cultural differences and broaden my horizons. It helps me to expand my vision and to know there are many interesting things I want to see by myself in this world. I have been traveling around Hokkaido and enjoying the beautiful landscapes. These years are really very important in my life. I honestly believe I have become a better version of myself due to all of my wonderful experiences here.