臨床研究

自己免疫性水疱症の発症メカニズムの解明

-はじめに

自己免疫疾患は、免疫システムが自身の体を攻撃することで発症する病気であり、特定の臓器のみに障害をきたす場合(関節リウマチや橋本病など)や、全身の臓器に障害をきたす場合(全身性エリテマトーデスなど)など、多様な疾患が含まれます。その原因や発症機序も多岐にわたると推察されます。自己免疫性水疱症は、皮膚を構成するタンパク質に対する自己抗体によって皮膚の細胞同士の接着が障害され、水疱を形成する疾患です。水疱が形成される部位により、天疱瘡群(尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡など)と類天疱瘡群(水疱性類天疱瘡、粘膜類天疱瘡、後天性表皮水疱症など)に大別され、それぞれ複数の自己抗原が標的となることが知られています。 近年の研究により、自己免疫疾患の発症メカニズムは徐々に解明されつつありますが、未だ不明な点が多く残されています。一般的に、自己免疫疾患は自己抗原に対する免疫寛容の破綻に伴う自己反応性リンパ球や抗体を介した組織障害によって生じます。しかし、どのような人が罹患しやすいのか、なぜ・どのように免疫寛容の破綻が生じるのか、自己反応性リンパ球や抗体が産生・維持されるメカニズム、そして自己抗体が組織にどのような障害をもたらすのかなど、多くの要素が未解明です。

-本研究の目的

当教室では、最も頻度の高い自己免疫性水疱症である水疱性類天疱瘡の基礎研究を長年にわたり行い、疾患モデルマウスや培養細胞を用いた病態解明において成果を挙げてきました。また、稀な自己免疫性水疱症を診断できる全国でも数少ない体制を維持しており、多くの患者様の診療実績があります。本研究では、これらの強みを生かし、患者様からご提供いただいた検体を用いて、自己免疫性水疱症の発症メカニズムを詳細に解明することを目指します。詳細なメカニズムを探ることは、新たな検査法や治療法の開発につながる可能性があり、将来的な医学の発展に大きく寄与するものです。

*検体の解析・測定希望の方は事務局(aibd.hokudai@gmail.com)までご連絡ください。

-研究対象者及び適格性の基準

(1)対象者のうち、(2)選択基準をすべて満たし、かつ(3)除外基準のいずれにも該当しない場合を適格とする。

(1)対象者

2015年7月1日から2043年3月31日の間に、自己免疫性水疱症患者と健常者を対象とする。また、1989年1月から2043年3月の間に診療を受けた自己免疫性水疱症患者(カルテ情報のみ利用する場合)、あるいは同期間に研究目的で検体を保管した自己免疫性水疱症患者を対象とする。

(2)選択基準

①年齢および性別は問わない

②本研究の参加にあたり十分な説明を受けた後、十分な理解の上、患者本人(未成年あるいは認知症などにより本人による意思決定が困難な場合は代諾者)の自由意思による文書同意が得られた患者

(3)除外基準

①研究責任者が研究対象者として不適当と判断した者

(4)研究に利用する既存試料に関する、保管時の同意取得状況

すでに保管された検体を本研究で用いる際、研究対象者に対して具体的な研究内容を提示せず、将来の医学研究のためという目的で文書により同意を得て保管したものである(包括的同意)。

-試料の採取、症例登録、同意の取得、倫理審査

  1. 試料の採取・保管

皮膚・粘膜(1cm四方を診断時、診断確定のためにも必要であり通常行う検査)、血清(採血10mlを診断時、治療開始前および開始後 通常診療では1回/月)、血球(採血5~14mlを適宜)、尿(5-20mlを適宜)、唾液(1-3mlを適宜)、遺伝子(採血1~7mlを適宜)、毛髪(数本を適宜)、水疱内容液(水疱出現時)、汗(0.5-1.0mLを適宜)、血漿交換療法廃液

 

  1. 症例登録
     研究責任者または研究分担者は、研究対象者に個人情報が特定されないよう、氏名等をまったく別の記述に置き換えた研究用IDを付与し、適格性を確認の上、症例登録を行います。
  2. 同意の取得

・既存試料・情報の提供のみを行う機関においては、審査委員会で承認された同意説明文書を用いて、口頭で十分に説明し同意を取得し、その旨をカルテ内に記載します。

・既存試料・情報の利用についてインフォームド・コンセントを受けることが困難な方については、研究の目的を含む情報を当機関および北海道大学病院ホームページ等に掲載することで、拒否する機会を提供します。

  1. 倫理審査
    中央一括審査にて承認が得られた研究のため、各施設での倫理審査は必ずしも必要ではない。必要に応じて各施設で審査を行うこと。必要な書類は事務局から送付する。

研究事務局  北海道大学病院・皮膚科 

連絡先 事務局__ aibd.hokudai@gmail.com

既存試料・情報の提供のみを行う機関 

市立釧路総合病院皮膚科、市立札幌病院皮膚科、KKR札幌医療センター皮膚科、市立千歳市民病院皮膚科、独立行政法人地域医療機能推進機構札幌北辰病院皮膚科、小樽市立病院皮膚科、函館中央病院皮膚科、帯広厚生病院皮膚科、滝川市立病院皮膚科、JR札幌病院皮膚科、福島県立医科大学皮膚科